特集!まちづくりカルテvol.1



2002.3-4

1.川越市の歴史について 
 川越市は、ほとんどが平地であるが、貝塚等も見られるため、大昔には海岸部であったと考えられる。市内を流れる河川では縄文や弥生の住居跡も見られる。

 平安時代から鎌倉にかけて武士が実権を握るようになると、河越氏は鎌倉幕府のご家人として用いられ、河越太郎重頼の娘が源義経の正妻となるほど、実力を持っていた。

 元禄元年(1457)に上杉持朝の命により、川越城が築城され、川越城は現在の初雁公園付近に移った。やがて関東で北条氏が実権を握るようになると、川越城は小田原城の支城となるが、豊臣秀吉によって滅ぼされてしまう。天正18年(1590)の徳川家康の関東入府に伴い、当地には川越藩が置かれ、幕末まで繁栄を続ける。

 川越は江戸北部の守りの要であり、豊富な物資の供給基地として重要だったため、江戸幕府は有力な大名を配置する。中でも、松平信綱は、舟運を起こして江戸との物流を確立させ、以後、商人の町としても発達してゆく。

 明治期には埼玉県随一の商業都市として繁栄し、主に穀物、織物、たんすなどが特産物であった。明治26年に大火事があり、町の三分の一が焼失してしまうが、後に、耐火性を重視した土蔵造りの店舗を建設して復興し、蔵の町としての景観が形成される。

 大正11年には川越町と仙波村の区域を持って市制が施行され、川越市が誕生する。その後、周辺の村々と合併を繰り返し、現在の市域となる。

 昭和期には埼玉南西部の中心都市として発達し、近年では「歴史と文化の町」として注目されている。観光客は年間370万人の入り込みがあるという。

川越中心部地図
蔵造り資料館
蔵造りの町並み


2.都市の規模について

 川越市の現在の人口は約32万人、面積109.16キロ平米で11万世帯が暮らす中核都市である。 工業では化学部門が多く、全体の約25%を占める。農業分野では都市農業地帯という環境の中にあり、やく95億円の農業生産額を上げている。生産は主に、米や大根、ほうれん草などが多く、首都圏に出荷している。商業分野では、古くから商人の町であることを反映して、卸問屋、小売店数は3,332軒。年間およそ8,329億円の売り上げがある。観光部門では年間約370万人の入り込み客があり、県内では第4位となっているが、上位の2市が、大規模レジャー施設を有していることを考えると、市内観光ではトップクラスの入り込みであることが考えられる。

 しかし、川越は年間を通して祭りやイベントが多い...。

川越祭り
小江戸花火大会
だるま市


3.川越市の施策・計画

 川越市は平成8年に平成17年度までの10年間を期間とした「第二次川越市総合計画」を策定しており、現在のまちづくりもこれに基づいて行われていると考えられる。上記計画では、基本計画から実施計画までを3段階の区分しており、平成14年では第三段階でのスケジュールを実施している。内容は施策を「保険・医療・福祉」「教育・文化・スポーツ」「都市基盤整備」「産業」「生活環境」「地域社会と市民生活」「行財政運営」の7分野にわたって、体系的に将来の方向性を示している。
川越市土地利用構想図
出典:川越市役所HP


4.現在の町並みについて

 川越の見どころのメインはやはり蔵造りの町並みがきれいな一番街だろう。この周辺は国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されており、通りに面して国の有形文化財である、あさひ銀行川越支店や重要文化財である大沢家住宅などが並んでいる。

 次に観光のメインとなっているのが、菓子屋横町という通りで、本来生活のための通路をでみせの向かい合う通りへと改良したようである。なんといってもこの微妙な復員の狭さが日本人の好みにマッチしており、ちょうどお祭りの屋台通りを彷彿させる。

写真クリックで拡大>>
あさひ銀行川越支店
川越観光マップ
大沢家住宅
 川越は広域的に文化財等が点在し、また、観光スポットが少々鉄道の駅から離れているということもあり、市内では巡回バスが運行しており、休日にはあさひ銀行川越支店の駐車場が解放されるなど、まちをあげて観光客に配慮している。

 一番街が江戸のイメージであるのに対し、現在地元で力を入れているのが、大正浪漫通りである。ここは有形文化財である川越商工会議所をはじめとする大正風のレトロな建築物が建ち並ぶ他、川越TMOによるチャレンジショップなどが置かれていた。

 他にも、時の鐘や喜多院、川越城本丸御殿、蔵造り資料館など、観光スポットが歩行者の視点で適度に分散配置されているのも観光入り込みが盛んな理由の一つであると考えられる。

菓子屋横町の賑わい
懐かしいお菓子が
いっぱい
川越商工会議所 時の鐘
チャレンジショップ
夢の市


5.まちづくりに関する取り組み・課題

 川越を歩いて第一に目に付くのは、他の地方都市にはない活気があることである。観光客がたくさん来ていて賑やかということもあるが、地元の人々がそういったことに積極的に参加していて、行政主導ではなく、地元ぐるみでまちを盛り上げているということを思わせる。実際に調査当日も、駐車場で交通整理をしていた人は地元の住民であったし、疑問に感じていることを住民の人が快く回答してくれた。調査当日は地元住民のまちづくりに関する意識の高さがうかがえた。

 さて、現在この地で観光に一役かっているのが、「芋」であるが、この「芋」は川越ではあまり関わりがなかった食材らしいが、現在ではお土産や露店の商品のメインとなっている。確かに「芋」ならば、いろいろな料理やお菓子に利用が可能であり、江戸の町並みにも何となくマッチする。うまい食材をまちづくりに活用したものである。

 一番街は伝建が指定されているということもあり、建築に関して一定の取り決めはあることながら、蔵造りのサンクスには驚かされた。一番街通りの電柱はすべて地中化されており、その他の地域でも電柱の地中化を進めているが、電柱に付属しているトランスを地上部のどこに下ろすかなどの問題から、なかなか地中化が進まない場所もあるようある。景観に関して、ローカルな話題だが、市役所前にできた首都圏デベロッパーのマンションが、周囲の景観を損ねるとのことで、問題になっているようであった。

 川越には、様々な有形文化財の他、伝建地区指定、時の鐘が日本の音風景100選、菓子屋横町がかおり100選に選ばれているなど、サウンドスケープ、スメルスケープ...など、様々な要素を活用して地域の魅力を創出している。また、一年間を通してたくさんの祭りイベントが多いのもこの町の特色の一つである。調査当日は大道芸人などの姿も見られた。

 大正浪漫通りではまちづくり機関「川越TMO」のチャレンジショップ「夢の市」が出店していたが、調査当日では、店の賑わいはそれほどでもなかった。上記の店は昨年12月にオープンしたばかりである。店の中は、ベトナム雑貨を扱うもの、ガラス商品を扱うものと、分野がさまざまであるため、イベント等と関連させて客の停留を図るなど、今後の同行に期待される。

 最後に、著者が感じた川越の印象をキーワードにまとめる。

・江戸の町並み・芋商品・駄菓子・住民主導・だんご・通り毎の風景・まつり

といったところか。

大好評!?芋アイス
サンクス下町風
トランスが
おろせない電柱
問題のマンション
夢の市ちらし
夢の市の中の様子
ユニークなモニュメント
もたくさんありました。


6.川越関連情報/参考資料

・川越市ホームページ
http://www.city.kawagoe.saitama.jp/

・川越商工会議所
http://www.kawagoe.or.jp/

・川越観光案内
http://www.webcreate-net.com/kawagoe/

・インターネットによる小江戸川越街づくりの会
http://www.e-dream.gr.jp/koedo/index.html

・川越見物
http://www2q.biglobe.ne.jp/~ysakamot/


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